チビ・ゆきの地上と地下と双子の英雄

地上と地下と双子の英雄置き場

地上と地下と双子の英雄 第一章 1話

-大樹の中に潜む影-

 

 

「おぉー。久しぶりだな…ふしぎの森」

目の前に広がるのは白黒の色の少ない森。幹の色は黒く、白い葉が神秘的に咲いているこの森は、俺が随分前にスターストーンを集める為に寄った森だった。前に来た時と全然変わらぬ姿で森は出迎えてくれたようだ。寧ろ前回来たときより静けさが増しているような気はするが。

「…何もいねぇな」

前にはそこかしこにいたパックンフラワーやクモの敵が顔を見せる気配がない。より静かなはずだ、静かすぎて不気味ささえも感じられる。

「……さっさと大樹に行くか」

少しだけ身震いをする、寒気もしてきたようだ。急ぎ足でいつもの道から大樹へと向かうことにした。

 

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「ここも、変わんねぇか」

異様な赤い扉がついている大樹、ここも前に来た時となんら変わっていなかった。いや、少しだけ変わっていることがある。

「…なにしてんだ、あいつら」

大樹にはここに来た時に世話になった種族が住んでいる。名はプニ族というらしい。そのプニ族達がこぞって入口の前で待機していた。扉はもう開くようになっているはずだから入れるはずなのだが、プニ族達はずっと扉の前で佇んでいる。

「……どうしたんだよ?」

たまらず近づいて声を掛けた。するとプニ族達が一斉に振り向き、口々に「マリオさんだ!」「あれ?マリオさんだー!」と声を上げ始める。その内、一匹のプニ族が俺の前に出てきてキョトンとした顔をした。

「プニオ、だよな?」

キョトンとした顔をするプニ族を拾い上げながら思わず確認する。するとプニオと言われたプニ族は困ったようにキョロキョロしながら「そうだよ」と答えた。

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「なんでそんなに困った顔してるんだよ」

目をパチクリとさせたプニオは、周りをキョロキョロと見回し首を傾げながら俺を見つめた。

「だってマリオ、さっき大樹の中に入っていかなかった?」

「は?何の話だ?」

ありえない。俺がふしぎの森に来たのはついさっきの出来事だ。そんな俺が既に大樹の中に入っているわけがない。寧ろ仮に俺が大樹の中に入っていったとしたらここに居る俺は一体なんなんだ。

「おっかしいなー……茶色のマントを着けたマリオが大樹の中に探し物があるって言って入って行ったんだよ!本当だよ?」

プニオが嘘を言わない奴なのはよく知っている。だから本当なのだろう。かくいう、今言われた茶色のマントを着けた俺には少し心当たりがあった。もしそれがあっているのであれば、プニオ達がそいつを俺と間違えるのも仕方の無いことだ。

「よし、分かった。俺も中に入っていいか?」

「いいよ!今僕ら、入れないんだもん」

そういうとプニオは頬を膨らませて怒ったような顔をする。なにかあったのだろうか。

「…どういうことだ?」

「大樹の中にいっぱいスパイダーがいるんだ!お陰で僕らも中に入れないし、トゲ族の皆も困ってるんだよ」

なるほど。それで皆大樹の中にも入らず、こんな所で立ち往生していたのか。確かにあの蜘蛛の敵が大量にいるとなると、プニ族やトゲ族はあっという間に食われてしまいそうだしな。

「………よし、任せろ。ついでに退治してやる」

「ホント!?流石はマリオ!」

嬉しそうに顔を輝かせるプニオに、周りの皆も舞い上がっている。さすがは俺、期待されているな。

「いいってことよ、じゃあな!」

「うん!!」

嬉しそうなプニ族達に別れを告げて、俺は赤い機械の扉を開ける。中に潜んでいる敵がいないことを確認し中に入ると、前と違って蜘蛛の巣が張り巡らされている内部に目をぱちくりとしてしまった。かなりの量の蜘蛛の巣がある所を見ると、随分とスパイダーにしてやられているようだ。

「こりゃ駆除も大変そうだな…」

さて問題はそれだけじゃない。中にいるはずの知人も探さなければ。もしかしたらそいつが勇者の1人かもしれないのだ。しかもそいつは見知った仲に違いない。

「多分、あいつだよなぁ……」

ボソリと呟いてからある草に目をつける。先ほど、色々考えているさなかその草から光が見えたのだ。

「……………?」

なにか落ちているのかと草を漁ってみると、案の定固いものが手に当たる。四角い形状のそれを手に取って持ち上げてみると、それは分厚い本だった。

「なんだこれ、辞書みたいだな…」

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国語辞典並みにありそうなその本の表紙には、何かの言語でタイトルが書かれていた。俺の知っている言語ではないためどんなタイトルかは分からないが、中をペラりと捲ってみるとその本がどんな本かが良くわかった。

「魔術書…か」

魔法使いやらが持っている魔法の書物。それがこの本の正体だった。なんの魔法が載っているかはやはり読めないし、恐らく読めたとしても俺自身に使いこなせるわけもない。

「一体誰が……」

誰が、とそこまで考えた時。入口とは反対側にある赤い機会の扉が音を立てて開いた。スパイダーか?と本を抱えながら構えるが、どうやら等身的に人間のようだった。それもよく見知った…。

「あぁぁぁー!!!その本!!」

扉から出てきた人間は、俺の抱えている本を指さしてそう叫んだ。やはりお前だったのか。

 

「………マステラ・グランヴェール」

 

俺によく似たそいつの名前が、俺の口から漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

-続く-

プロローグまでのキャラ&用語紹介

-キャラ解説-

《マリオ・グランカート》

性別:男

年齢:25歳

身長:155cm

『炎を操りし地上の英雄』

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《カトレア》

性別:女

年齢:年齢不詳

身長:138cm

『自称悪魔の可憐な少女』

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ランペル

性別:男

年齢:年齢不詳

身長:147cm

『呪い操りし白布お化け』

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《ディメーン》

性別:男

年齢:年齢不詳

身長:175cm

『華麗なる魅惑の道化師』

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《デアール》

性別:男

年齢:年齢不詳

身長:???

『ヨゲンを伝える古代の民』

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《ライン・ウォーカー》

性別:男

年齢:年齢不詳

身長:150cm

『未来を予知する男』

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-用語解説-

《地下世界 アンダーグラウンド

地下深くに広がる暗闇の世界、無法地帯となっている。
色々な闇の一族だったり暗殺者や魔術師の一族が住んでいる。
その中でも有名なのが暗殺者の一族のウォーリア家、闇の魔術師の一族のルーン家、科学者の一族のリオレナ家とされている。