チビ・ゆきの地上と地下と双子の英雄

地上と地下と双子の英雄置き場

地上と地下と双子の英雄 第一章 3話

「っと、だいぶ奥まで来たんじゃない?」

「そうだな、もうすぐのはずだ」

スパイダーを蹴散らしながら進むこと約30分。一度来たことがあるおかげか幾分かスムーズに進んでくることが出来た。以前のように仕掛けがあるわけでもなく、変わったことといえばトゲ族の住処の様子に少し違和感を感じたぐらいだ。

「この下だな」

「スターストーンがあるんだっけ?」

「そうそう」

エレベーターのような仕掛けになっているそれに手を掛け起動させると、俺達二人を乗せた床が動き始め下へと降り始めた。最後まで降りた床から降り、スターストーンが祀られているはずの台座がある場所へ行く。中に入ろうとするも、中は真っ暗闇になっており前に進むことを拒まれた。

「え、暗っ!こんな暗いの?!」

「前に来た時はそんなこと無かったんだけどなぁ…てかマジで暗いな…」

目の前の暗さにどうするかと頭を悩ませると、ふいに頭上から呻き声が聞こえてくる。ハッとして顔を上げるとその正体がわかった。

マステラ…これ、暗いんじゃないぞ」

「奇遇だね、僕もそうかと思い始めたところだよ」

同じく上を向いたマステラが魔導書を構えて少し下がる。

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広間は暗いのではなく、大きな影によって暗く見えていただけだった。大きな影の正体は天井から落ちてくると、俺達二人を見据え大きな奇声をあげる。

「こんなでっかいスパイダーが居るとか聞いてないよー!」

「まぁ、スパイダー大量発生は十中八九こいつの仕業だろうな!」

巨大スパイダーは俺達二人を見比べると俺に狙いを定めたらしく、こちらの方を向き大きな糸を吐き出してきた。

「あいつの狙いは俺らしい、叩くのは任せたぜ!」

「OK任せて!!」

マステラは魔法で仕舞われていた大剣を取り出すと巨大スパイダーに向かっていく。巨大スパイダーはそれでも標的を変える気はないらしく、俺に狙いを定めたまま糸を吐いてくる。それを俺は避けながらマステラの様子を見た。どうやら脚のそばまで到着したらしく、大剣を振りかざし八本の内の一本を斬る。すると出ないはずの火花が散り、脚の一本が崩れ落ちた。と、同時にマステラが声を上げる。

「マリオ!こいつ機械だよ!!」

その声に巨大スパイダーの顔を見た俺は、その言葉を把握した。よく見ればこいつの目は赤く光っており、生き物ではないことが容易に分かった。

「一気に叩くぞ!」

「任せて!!」

言葉をあげると同時に巨大スパイダーの内側に潜り脚を蹴り折る。残りの六本も同じように二人で折っていき、とうとう胴体だけになった巨大スパイダーの上に二人で乗った。

「これで、終わり!!」

マステラが心臓部分であるだろう場所を剣で突き刺すと、巨大スパイダーは奇声をあげ同時に気味の悪い機械音と爆発音を鳴らし活動を終えた。もう動かなくなったことが分かると、俺達は胴体の上に座り込み息を吐いた。

「しっかしまぁ…こんなでっかいの、誰が作ったんだろうな?」

「どこかに製造者のマークか名前があるはずだよ。科学者ってのはそういうもんだからね」

俺からの質問に何かを知っている風に答えるマステラを横目に胴体を眺める。すると胴体の端っこの方に何かが書かれているのが見え、もしやと俺は見える場所へと向かう。埃や蜘蛛の糸を払うとその文字が見え、どうやら読める言語で書かれているようだった。

「………Dr.リオレナ?」

その名前を挙げた俺が顔を上げようとした次の瞬間、今まで察した事の無い殺気が胴体の上の方から感じた。驚いて胴体から飛び退き上を見上げると、そこにはマステラしか居なかった。

マステラ…?」

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殺気を放っているのがマステラだと分かった俺は恐る恐る声を掛ける。マステラは一言Dr.リオレナという名前を反復させるも、すぐに俺の声に気付いたのかいつもの柔らかい表情で俺の方に向き直り、胴体から降りてきた。

「ごめん、なんでもない」

いまだに抑えきれていない殺気からして、なんでもないことは容易にわかる。だが、俺はマステラの事を信じて聞かなかった。言いたくないことなら、言わない方がいい。誰だってそういうのは無理にいうことじゃないから。

「全く、迷惑なことをするよね!懲らしめに行こうよ」

簡単に懲らしめに行こうという彼に当てがあるのかと聞くが、どうやら検討が付いていないらしく首を傾げて悩み始める。その様子を見て呆れるも、トゲ族の住処の違和感を思い出した俺はすぐにそれをマステラに伝えた。

「こんな巨大な機械作るぐらいだから、住処を改造して拠点にすることぐらい簡単なんじゃないかな?」

マステラの言葉に俺も頷きもう一度動く床に乗り込んで起動させる。動く床は俺たちを乗せて上へと上昇し、やがてそこには誰も居なくなった。

誰も居ない祭壇のある広間に、機械音が小さく響く。監視カメラの向こう側で、科学者は薄く微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

-続く-